よーしフライを始めるぞ!っと、いざ最初の一本を買う段階で、
さてどんなものを買ったらいいのか悩む人、結構多いのでは。
フライロッドは高い買い物ですから、あとで後悔したくない。
何本も買えるものじゃないですから。ところがメーカーはモデュラスとかの素材やら、テクノロジー、ロッドの軽さを誇示
しがちでビギナーにとっては何を基準に選んだら良いか余計にわからなくなるってもんです。確かにロッドの自重や素材は重要ですが、その前に
もっとも影響を与える基本的な要素があります。
ロッドの長さ
ロッドの性能にもっとも影響を与えるのはその長さだと思います。
ロッドの長さはキャスティングモーション中に描かれるロッドテ
ィップの軌跡を決定づけ、同じ距離でリストを動かしても、長い
ロッドの方が短いロッドより大きな弧を描き、ティップの移動距離が
長くなるからです。フライラインはロッドのティップと連動して動くため、
早く移動するロッドティップはラインスピードも早くなるというわけです。
なので長いロッドのほうがラインの立ち上がりやスピードの乗りはよくなります。
しかーし!!!必ずしも長いロッドが常に有利というもんではありません。
長いロッドの高いロッドティップはループが広がりやすく、広いループは
ラインスピードの増加を妨げ、エラーも起きやすくなります。さらに長いロッド
はとかく扱いにくい点や、バスのようなピンポイントキャストにはアキュラシー
さに誤差を生じやすいなどのマイナス面も持っています。"フライロッドは
妥協の産物"とは誰かが言ってましたが、これは核心をついた言葉だと
思います。一般的にビギナーからベテランまでゆとりをもって扱え、ラインスピード
とのマッチングに優れているのは、やはり8フィートから9フィートの長さだと思います。フローターなら、ショートロッドと言う声も聞きますが、至近距離からの打ち返しだけならばともかくとして湖面上での扱いやすさだけで短くできるもんでもないと思います。
高いループを維持し、とっさのボイルめがけて遠投するような場合には、ある程度の長さも欲しいところです。
フライロッドは妥協の産物なんです。どこに妥協点を見つけるかはあなた次第です。
ロッドの表示
ほとんどのフライロッド製造メーカーは自社内でそのロッドに最適な
ラインウエイトを割り当てています。それは時に#6などの単一なライン表示であり、
またあるときは#6/7などの2ライン表示です。これらのライン表示はメーカーが
そのラインウェイトにベストマッチすることを確認してつけられており、開発テスト
には有名なキャステイングアドバイザーや著名なアングラーが関わっていることも
あります。最近ではライン番手、長さ毎にロッドのラインナップが組まれるケースが
多く、その表示はロッドのモデルナンバーとして使われることも多く見うけられます。
たとえばモデルナンバーが”FR8667”だとしたら、FRシリーズの8フィート6インチ、
ライン指定は6番と7番の両方という具合です。
フライの場合、ロッドとラインの関係は非常にシビアです。ルアーだったら、
4lb−12lbと広いライン指定がされ、これを無視してもルアーは投げられます。
しかしフライはせいぜい3番手以内です。すくなくともこのライン指定にあったサイズ
を選ぶことが基本になります。なのでロッドとリールを買ってから、さて何を釣ろうか
ではなく、何を釣るかを決めた上で必要なラインを決め、他のタックルを選びます。
これは当たり前のことかもしれませんが重要なことです。とくにフライフィッシング
においては最初のラインでそれ以降のロッド、リール、すべて決まってしまうのですから。
アクション
アクションとはロッドを振ったときのロッドのしなり具合のことを意味します。
このロッドアクションは基本的にスロー、ミディアム、ファーストなどであらわされます。
簡単に言えばスローアクションはティップに負荷をかけたときに全体にわたってしなる
ものです。ミディアムはティップ及びミッドセクションがしなり、バットセクションは比
較的直線を保ちます。ファーストアクションはもっぱらティップが曲がり、ミッドセク
ションやバットは曲がりが少ないものをさします。
このスロー、ファースト、ミディアムという言葉はそれぞれラインスピードをも意味してます。
ファーストアクションロッドは最もラインスピードが高く、より正確で長いディスタンス
キャストをもたらしますが、タイミングミスに対する許容幅が少ないため、人によっては
この硬いロッドを敬遠する人もいます。それと対照的なのがスローアクションです。
ラインスピードが遅く、ゆとりのあるキャステイングはビギナーにもタイミングがとりやすく、
ミスに対する許容幅もかなりあります。柔らかいロッドを使うとあたかもロッドが勝手に
投げていると感じるのはこのためです。ただし、スローロッドは長い距離のキャスティン
グや、ジグフライなどのヘビーなフライを投げるのに必要なパワーをラインに伝えきれない
という決定的なマイナス面があります。ミディアムはこの中間点を取ったもので、スロ
ーロッドよりもパワーがあり、なお且つキャステイングの自由度も兼ね備えています。
どのアクションを選ぶかは大方個人の好みですが、特定の条件下においては、より有利、
または不利に働く場合もあります。スローアクションは一般的にビギナーに向きで、
タイミングの幅も広く投げやすいですが、それは小さなフライでショートキャスを行う
条件によりマッチしているといえます。ファーストアクションは風のあるような広い湖で
使う場合や、使用するフライ自体が大きくまたは重いなどの場合に適していると言えます。
材質
フライロッドの材質は一時期メーカーのうたい文句になってました。ロッドの性能は化学
合成技術の進歩によってもたらされたといっても過言ではないからです。しかーし!!!
その重要性はほとんど過大評価です。ロッドを選ぶときはまず、長さ、アクション、
ラインウェイト、これに注目すべきでしょう。より高価な材質でロッドを選ぶと言うこと、
つまりIM6とか30tカーボンなどで選ぶというのは、ホンダとトヨタのどちらの車を買うか
という程度のレベルです。安いロッドのほうがよく動くということは多いのです。
つまりこれは実用的な面という意味です。実用的とは使用範囲の頻度です。高いロッド
はとかく限界性能だけが高くなりがちです。
フライロッドはその原材料によってブランクの特性と材質が決まります。材質とは
グラファイト、グラスファイバー、バンブーなどのこと。現在ロッドに使われている
もっともポピュラーな材質はグラファイトです。このグラファイトは荷重に対する
強度にすぐれ、幅の広いアクションテーパーを可能にしました。それでいてメンテ
ナンスもフリーです。むかしながらのバンブーロッドは一部の有名なものを除き、
今ではほとんど使う人はいません。(僕はたまに使ってるが)。その他の材質として
はグラスファイバーやスチール製ロッドなどがあります。グラスファイバーは1950年
ごろから一世を風靡しましたが、今となっては一昔前のロッドです。
材質において最も重要な特性とはモデュラス、つまり粘り強さです。ハイモデュラス
のロッド、(たとえば44トンモデュラス)はその数値より低いロッド(たとえば33ト
ンモデュラス)よりも強く硬い特性を持っています。ハイモデユラス材質はロッドの
肉厚をうすく出来るのでロッドの重量を50パーセント以上、軽くすることが出来ます。
よって高番手のロッドでも最近では3オンス程度の重さしかないわけです。ただしロッド
は自重が軽いだけが扱いやすいと言うわけではなく、キャステイングモーション時の
重心がグリップに近いほうが軽く感じられるため、この軽さとはあくまで参考程度に
しかなりません。
他の材質による特性としてはダンピング特性(組成能力)があげられます。このダンピ
ング特性は、いわばロッドの揺れや振動を止め、元の状態に戻そうとするエネルギー吸
収能力のことです。たとえばロッドを振り切って止めたときに、ロッドの穂先は一瞬前
後に揺れ動きます。その乱れた振動は微妙にラインに伝わり、ロッドグリップにも振動
が伝わります。このラインの乱れはラインスピードの増加に悪影響を与え、グリップに
伝わった振動は釣り人に疲労感を与えます。ダンピング特性のすぐれたロッドはこの
振動の乱れがすぐに収まるという意味です。より高いダンピング特性のロッドはモデュ
ラスと同様、価格にかなり影響します。
その他のコンポーネンツ
フライロッドにおいてロッドブランクはもっとも重要なコンポーネンツであることは
間違いありません。しかし身体に与える影響という面では、他のパーツもかなり重要
です。とくにロッドのグリップは釣り人とロッドの接点ですから。
グリップ
通常コルクで出来ており、その形状から基本の3種類に分けることが出来ます。
基本的にはハーフウェル、フルウェル、シガーの3種類があります。ハーフウェルとシガ
ータイプは軽いライン用の典型的なグリップ形状で、人差し指を立てたり、自由度のある
前細りのテーパーがついています。これに対しフルウェルグリップは高番手ラインのロッ
ドに見られ、前方の直系が太めに作られています。この部分に親指をあてて、テコの原理
で手首の負担を軽減します。また、ファイティングバットと呼ばれる補助のグリップがリ
ールシートの下につくこともありますが、これは主に大きな魚とのファイト時に補助的な
役割を果たすものです。バスの場合、場合によってはリリーパッドの中からバスを引きず
り出すこともあるので腕の腹にあてがう程度の小型のファイティングバットがついている
と便利です。
リールシート
とはフライロッドにリールをつけるためのコンポーネンツです。タイプには
3タイプあり、ダウンロックシート、アップロックシート、スライドリング(ノーロック
シート)などがあります。ダウンロックシートはロッドの下側に向かってスクリューを締
め付けるもので、リールの位置は3タイプ中、最も下側に取り付けられることになります。
アップロックシートは逆に上に向かってスクリューを締め付けるもので、リールの足は
グリップに埋め込まれるようになります。したがってアップロックはリールの位置が手首
に近くなり、重心がグリップに近くなるため振りやすくなります。スライドリングはライ
トタックルによく使われているもので、リングでリールの足を挟んで固定するものです。
この場合はリングとリールの足とシートの摩擦だけで固定されているということになります。
リールシートの材質はアルミ、やニッケルシルバーなどの金属のほかにもローズウッドや
メイプルなどの銘木が使われることがよくあります。これらの材質は機能にはまったく
影響を与えるものではありませんが、こだわる人には無視できない問題です。見てくれは
大分違いますから。
ガイド
ラインを導くためにロッドに取り付けられた金属製のリングを言います。
通常のフライロッドは7個から10個程度のランニングガイドのほかに先端に付けられる
ティップトップガイドとストリッピングガイドで構成されています。ランニングガイドは
通常ハードクローム処理が施されたワイヤーでできており、形状はスネークタイプとワン
フットタイプの2種類があります。一般的にスネークタイプのほうが主流ですが、ワン
フットはラッピングが1ヶ所で済み、ロッドの重量も軽くなるため、本来ロッドが持つ
キャスタビリティが生かせ、高性能ロッドにこだわる人に人気があります。また、スト
リッピングガイドは最もフリクションのかかる部分で、リングの直径も大きく、セラミ
ックなどのすべりを良くする材質がはめ込まれています。反対にティップトップは最も
小さいガイドで、ロッドの穂先に直接はめ込まれてます。
ロッドの継ぎ数
フライロッドは少なくとも7フィート以上あるものがほとんどで、ルアーロッドとは異なり、
ワンピースロッドは滅多にありません。ほとんどの場合は2ピースですが、それ以外にも
より持ち運びに便利なものとしてトラベルロッドと言われるものがあります。これらの
ロッドは3ピース、4ピース、5ピースのように継ぎ目が多く、携帯性に非常に優れて
いますが、継ぎ目の多さが逆に弱点にもなります。1ヶ所でも継ぎ目が緩めば機能しなく
なるということです。つまりフェルールが多ければ多いほどトラブルの発生も多くなると
言えます。また、継ぎ目の多さはロッドの自然な曲がりをそこねることが多く、アクション
は同じ長さの2ピースロッドにはかないません。スーツケースにロッドを入れる場合を除き、
2ピースが最も信頼のおける継ぎ数と言えるでしょう。
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